買取専門店の展開
自動車メーカーは小売用車両の仕入経路拡大の一環として買取専門店を展開している。
買取専門店についてはトヨタ自動車グループでは“T-UP”、日産自動車グループでは“カウゾー”という屋号で展開されている。「第4 章 中古車買取事業者の現状」でも述べているが、小売価格とかけ離れた価格で下取車両を仕入れていたディーラーの隙を突く形で1990 年代初頭より買取専門店が台頭することとなり、ユーザーの車両下取に対する認識が多少なりとも変化することとなった。このような背景から独立系買取専門店へ流出していた小売用中古車(良質中古車)を再びディーラー系列の中古車仕入ルートへ取り込むべく、メーカー主導で買取専門店を整備することとなった。これにより、自動車メーカー系列企業は従来の新車もしくは中古車販売に伴う下取のみならず、買取という新たな仕入チャネルを増加させることとなった。しかしながら、このような自動車メーカー系買取専門店には課題も多い。店舗を運営するディーラーではこれら買取専門店を自社の新車販売店もしくは中古車販売店と併設で展開することが多い。そのためユーザーにとっては、「他銘柄の車両は買取価格が安いのではないか」、「下取と大差がないのではないか」といった心理が働きやすい状況となっている。
実際に系列ディーラー併設型買取専門店における店舗当りの買取実績は系列ディーラーを併設していない独立型買取専門店の半数以下に止まることが多い。そのため、買取専門店の看板代としてロイヤリティを支払うディーラーにとっては、独立型買取専門店を展開するだけの設備投資を行なわない限り旨みは少ない状況となっている。
しかしながら、ディーラーでは新車販売の伸び悩みや下取車両の低年式化といった影響により良質車両の入庫台数が減少しており、今後買取部門強化の重要性が増していることは間違いない。そのため、上述したメーカー系買取専門店の課題を解決しながら買取部門を強化させることを目的として、メーカー系以外の中古車買取業者が展開するフランチャイズに加盟し、買取を強化させるディーラーも存在している。ただ、現在のところこのような動きは、メーカー政策との連動性が高い直資ディーラー(メーカーが資本参加するディーラー)ではなく、地場ディーラーにおいてのみ見受けられる状況である。