残価設定ローンの販売

買取専門店網の構築といった直接な仕入経路の拡大のみならず、ファイナンス商品を利用した良質車両の仕入を行う仕組みも構築している。新車販売時の販売手法として確立されている残価設定ローンであるが、ユーザーにとっては金利負担が発生するものの、車両売却価格を据え置きにすることで、月々の支払額を軽減できるファイナンス商品である。3 年や5 年といった支払期間が終了すると、ユーザーは車両代金を支払うことにより自己所有とするか、ディーラーに返却するという選択肢が生じることとなり、現金購入時と比較すると、短期間で中古車となる可能性が高くなる。また、残価保証をディーラー(もしくはファイナンス会社)が行うことにより、発生した中古車はディーラーへ確実な入庫が行われることとなり、買取専門店等の他ルートへ流出することがなくなる。メーカーや車種にもよるが、概ね2 割程度の車両が支払期間終了後、ディーラーへ入庫している。
販売に注力しているトヨタでは新車販売台数の10 台に1 台において残価設定ローンが利用されるなど、残価設定ローンの使用が定着していることから、残価設定ローンを利用した車両の入庫台数がディーラーにおいて増加している。このような入庫が増加することは、発生する中古車の低年式化が進む中、中~高年式車両の仕入についてディーラーは大きな強みを持つこととなる。中古車流通台数が増加している状況であれば、中~高年式車両の流通台数の増加により、中古車としての価値が低下する恐れもあるが、現状は極めて中古車の玉不足の状態であるため、ディーラーにおいては有効な支援策と言える。

オークションの整備

各メーカーはディーラーにおける仕入経路の拡大と販売窓口の拡大を目的に系列のオークション会場を整備している。トヨタ自動車グループが“TAA(運営:トヨタユーゼック)”、日産自動車グループが“NAA(運営:日産ユーズドカーセンター)”、本田技研工業が“ホンダAA(運営:ホンダユーテック)”という名称で展開を行なっている。
このようなメーカー系オークション会場の展開はディーラーの仕入先拡大だけでなく、仕入れた下取車両もしくは買取車両の販売先が拡大することに直結するが、特に販売先としての役割は大きい。中古車の玉不足である現状では、直接仕入れた車両は可能な限り直接小売を行うことで利益を確保するという動きが活発化している。しかしながら、ディーラーでは限られた展示場スペースと販売力の中で販売を行ない、クレームや保証面で販売リスクが高めな低額車両の小売を増加させる動きも限定的なため、全ての入庫車両を自社で小売しきることは困難である。そのため、系列のオークション会場は、有効な販売先選定の一選択肢として、重要な位置付けとなる。